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未亡人をもてあそんだ結果、妻を呪い殺された「光源氏」

日本史あやしい話3

 

生霊が抜け出して葵の上を呪い殺す

 

『北斎漫画』の六条御息所(国立国会図書館蔵)

 

 それから程なく、彼女はさらに心を打ちのめされることとなる。光源氏の妻・葵の上が身ごもったというのだ。もちろん光源氏の子である。

 

 この事実を知った六条御息所、ついに嫉妬に狂ってしまう。「妻とは心が通わない」と言っていたにもかかわらず、しっかりその妻と懇ろになっていたわけだから、裏切られたようなものである。光源氏を恨み、その妻をも憎んだ。

 

 憎しみが募った結果、とうとう六条御息所の身から生霊が抜け出す。生霊は祟りをなし、葵の上を難産で苦しめた。男子・夕霧は産まれたものの、葵の上は産褥(さんじょく)に苦しんだのち亡くなった。六条御息所が呪い殺してしまったのだ。嫉妬されるほど愛されるのは嬉しい気もするが、度を超えた妬心は不幸を招くようである。

 

 なお、生霊については『源氏物語』以外に、平安時代の説話集『今昔物語集』にもその実例が記されている。江戸時代にも、奇談集『曾呂利物語』などに登場するほか、「離魂病(りこんびょう)」という病として認識されていたという。

 

■罪作りな男にもてあそばれた六条御息所の悲運

 

 その後も光源氏から袖にされ続けた六条御息所は、傷心を癒そうとしたのか、斎宮(伊勢神宮に仕える役)となった娘(姫宮)に付き添って俗界を離れ、野宮を経て伊勢へと向かうことに。彼女を打ち捨てた光源氏も、さすがに後ろめたさを感じたのか、彼女が一時滞在していた野宮へ見舞いに訪れたこともあった。

 

 しかし、光源氏はその後も、紫の上や朧月夜の君、花散里、明石の君等々、数え切れないほどの女性と浮名を流し続けるのであった。なんとも罪作りな男である。目をつけられ、もてあそばれてしまった六条御息所こそ、不運であった。

 

 

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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